2015年2月25日水曜日

学生紹介:澁谷岳志(修士2年)







Q お名前と作品名を教えてください。

澁谷岳志(シブヤタカシ)です。
作品名は『Holy Shit!』です。

web:takashishibuya.jp
twitter:@TakashiShibuya


Q 本専攻に入る前はどんなことをされていましたか?
 また、なぜ本専攻に入ろうと思いましたか?

名前も岳を志すと書きますが、山の好きな家系に生まれ育ったので、何か山のことがもっと知れるかなと、大学にいって理学部で地質学を専攻していました。
子供の頃から山でスノーボードをやっていて、スノーボードのビデオをみてると、海外の映像と国内の映像の質感が違くて、なんでこんなに違うんだろうと映像自体に興味を持つようになりました。
そうして映画なんかの映像を注意深く見ていると、何か法則性や力学のようなものがみえてきて、ちゃんと勉強してみようとサークルは映画研究会に入りました。
サークルの映画研究会ではじめてアニメーションを作り、その作品の映画祭の受賞を機に、もっとちゃんとした作品を作りたいと考えて、大学と並行し美大予備校へ通いデッサンや美術を学びはじめました。
そこで経験したことは単なる絵の描き方ではなく、これまで無自覚に生きてきてとらわれていたいろいろを排除し、はじめて純粋な目で見る、モノの見方考え方のようなこと、生きていくために何かぼくにとっては重大なことで、より専念したいと思い、芸大の大学院に進むことを決めました。
地質学は一枚一枚の地層の間の時間の断絶にストーリーを考えますが、アニメーションも一枚一枚の間の断絶に動きを作っていくという、マクロかミクロかの時間のスケールの違いだけで、なにか原理的には同じことなんじゃないか、という感覚はあります。




Q 本作品を作ったきっかけを教えてください。

最初はどこを歩いていても何をしてもやたらとゾウのモチーフと遭遇したのと、三上章さんの『象は鼻が長い』という革命的な日本語文法論に影響されてきたので、ゾウをモチーフにしてみようと思いました。
そこからゾウをひっくり返したら股間を膨らませたブタになるんじゃないかと思い、それが10代の頃から感じていた精神分析的な去勢の感覚と自分の中で混ざってきて、そういったお話を描こうと思いました。
しかし実際にはうまくいかず悶々としていたとき、まさに「Holy shit!」と叫びたくなって、この言葉って直訳すると聖なるクソだけれど、意訳ではクソったれぐらいの意味で、その語感のズレが面白かったのと、自分の中にはその厳かな感じとやけクソな感じの両方の感覚が共存していて親近感がわいたのと、この世に産み落とされるということが聖なることにもみえる一方、クソみたいな不条理にもみえて、テーマにもあってると思って、そのズレの一致するところを目指していったら、お話はまとまりました。


Q 制作プロセスを教えてください。

チャコールを紙にざーっと擦り付けて、そのランダムな描写にあわせて写真を切り抜いて、それらを合成後、立体的に配置して背景をつくっています。キャラクターはラフな線で適当に描いて、クレパスで荒く塗っています。2カットほど、デッサンしていく過程をスキャンした動画もいれました。
それと釣りしたり山に行ったりしないと自分は生きていけないなということが分かってきて、制作の合間に山に行ったり釣りに行ったりして、そういうところで何気なく撮った写真が、ああ、これ作品に使えるな、と思って作品に使いました。
ロバート・トレヴァーという作家が「釣りは男が淋しさなしに孤独でいることができる地上に残された僅かな場所のひとつだ」ということを言っているのですが、そうやって制作をすすめるにつれ、「この孤独は誰にも渡すまい」と思ったので、作品の冒頭にもそういった文字を入れました。
音については、最初格好つけたくて、聖なる方向性で考えていたのですが、途中から開き直ってクソったれの方向性に転換しました。しかしそれだと刺激物が連続しすぎていて、最後の段階で聖なる方向性にふりなおしていく作業をしました。意識してやったことではないですが、こちらも良いバランスで目指すところに落ち着いてくれたと思います。
そういった日々のいろいろな断片の連続が、偶然の数珠つなぎのように、ひとつのかたちになっていきました。




Q 今回、何を一番重視して制作しましたか?

まず体調を整えること。それにつきました。


Q 制作の合間にしていた気分転換は何ですか?

釣り、山、バスケ、ピアノ、読書、タバコ、コーヒー、酒。カフェやバーで常連さんや店員さんとおしゃべり。家で叫んだり考えたり考えなかったり。あとは言えないようなこと。そんなことをしているうちに制作の方が気分転換になりました。

 


Q 在学中で一番印象に残った出来事は何ですか?

アトリエの玄関脇でスズキを釣ったことです。
タバコを吸いながらポイントみつくろってルアーを投げてみたら立て続けに二匹。
コンビニ袋に入れて木にかけておいたら、同期の久保くんがやってきたのを覚えています。
ムニエルとカルパッチョにして食べました。
そんなことをしていたらiphoneを海に落としたので、海にざぶざぶ入って拾いにいきました。
同期の久保くんが笑いながら動画を撮っていたのを覚えています。
壊れたのでしばらくは携帯を持たない生活もいいかな、なんて思って実践していたら連絡がとれないといろんな人に怒られたので、新しいのを買いました。


 

澁谷岳志さんの作品「Holy Shit!」は横浜・東京会場共に「第六期生修了作品」プログラムにて上映いたします。

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